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円安は資源株にとって追い風?それとも逆風?

ドル建て収益の円換算メカニズムを理解して、
セクター別の影響を正確に読む

結論:基本は資源株に追い風

「円安は資源株にとって追い風か逆風か」——結論から言えば、商社・資源会社など海外でドル建て収益を得ている企業にとっては基本的に追い風です。ドル建ての資源収益を円に換算したときの金額が、円安によって自動的に増加するためです。

一方で、エネルギーや原材料を大量に輸入して使用する企業(電力・化学・運輸・食品など)にとっては、円安は仕入れコスト増という逆風として働きます。「資源株=円安恩恵」というのは正確ではなく、収益の源泉が「外貨建て収入」か「輸入コスト」かで影響が真逆になるという点が重要です。

円安のメカニズム:ドル建て収益の円換算

商社や資源会社は、石油・LNG・銅・鉄鉱石などをドル建てで販売しています。この外貨収益を決算に計上する際に円に換算することで、為替レートの変動が業績数値に直接影響します。

円換算の売上・利益 = ドル建て収益 × 円/ドル為替レート

【円安の場合】
1億ドル × 130円/ドル = 130億円
1億ドル × 155円/ドル = 155億円(円安による増加:+25億円)

【円高の場合】
1億ドル × 155円/ドル = 155億円
1億ドル × 130円/ドル = 130億円(円高による減少:▲25億円)

資源価格自体が変わらなくても、為替だけで日本円での収益が大きく変化することがわかります。大手商社では「1円の円安で年間数十億円の営業利益増加」という感応度を開示しているケースもあります。

商社・資源会社への利益押し上げ

総合商社は、資源権益からの配当・持分利益・商品販売収益の多くをドルなどの外貨で得ています。そのため、円安局面では資源価格が変わらなくても円ベースの利益が増加します。

また、資源価格がドル建てで上昇していれば、その効果に加えて円安効果が乗算されるため、「資源高×円安」の局面では商社・資源会社の業績は大幅に押し上げられる傾向があります。2022〜2024年はその典型的な局面で、大手商社が過去最高益を更新した主要因のひとつでした。

石油開発会社(INPEX等)も同様に、原油を国際市場でドル建て販売しているため、円安恩恵が大きいセクターです。詳しくは資源株の全体像総合商社の事業構造の記事もあわせてご覧ください。

一方で輸入コスト増という逆側面

円安が追い風になるのはあくまでも「外貨収益を持つ企業」の話です。日本はエネルギーのほぼ全量を輸入に依存しており、円安はエネルギー・原材料のコストを引き上げる逆風として働く企業も多いという点を忘れてはなりません。

具体的には、以下のような産業は円安によるコスト増が収益を圧迫します。

  • 電力・ガス会社:LNG・石炭の輸入コストが上昇し、燃料費調整制度で一部は転嫁されるが、タイムラグがある
  • 航空会社:ジェット燃料(輸入石油由来)のコストが増加
  • 化学メーカー:ナフサ(原油由来)の原料費が上昇
  • 食品・流通:輸入原材料・食料品のコストが上昇
  • 陸運:軽油・ガソリンコストが上昇

セクター別の円安影響整理

以下の表で、円安が各セクターに与える影響を整理します。

セクター円安の影響主な理由
総合商社強い追い風外貨建て資源収益・持分利益が円換算で増加
石油・鉱業追い風原油・鉱物資源の外貨建て販売収益が増加
自動車・輸出製造業追い風海外売上の円換算額が増加(ただし原材料輸入コスト増もある)
電力・ガス逆風LNG・石炭の輸入コスト上昇が収益を圧迫
航空・陸運逆風燃料費(輸入石油由来)の上昇
化学逆風(原料高)ナフサ・輸入原料コスト上昇
食品・小売逆風輸入食材・食品の仕入れコスト上昇

円安相場においては、輸出企業・商社・資源会社が相対的に有利になる一方、内需型の輸入依存企業が苦しくなるという構造的な「勝ち組・負け組」の分断が生じます。

円高転換リスク:追い風が止む時

円安を追い風に業績を伸ばしてきた資源株・商社株にとって最大のリスクのひとつが円高転換です。日本銀行が金融政策を正常化し(利上げ)、日米金利差が縮小すれば円高要因になります。2026年時点では日銀の政策変更が引き続き注目されており、為替の動向は常に意識が必要です。

円高になれば、外貨建て収益の円換算額が目減りし、業績の下振れリスクとなります。仮に資源価格がドル建てで横ばいでも、円高進行だけで業績が大きく悪化するケースがあります。

  • 日銀の利上げ・金融政策正常化 → 円高圧力 → 外貨収益の円換算が目減り
  • 米景気後退でFRBが利下げ → ドル安・円高 → 同様に逆風
  • 地政学リスクの後退 → リスクオフ解消での円高戻し

資源株・商社株に投資する際は、現在の為替水準を「当然のもの」として前提にしすぎず、円高転換時のシナリオも念頭に置いておくことが重要です。

ポートフォリオでの考え方

円安メリットのある資源株・商社株は、日本のインフレヘッジや円安ヘッジとして機能する一面があります。インフレが進む局面では原油価格の上昇とも連動するため、資源株はポートフォリオの中でインフレ・円安に対するバッファーとして機能しやすいのです。

一方で、資源株に偏重したポートフォリオは、資源価格の急落・円高転換が重なった際に大きく下落するリスクがあります。ディフェンシブ株など他のセクターとのバランスをとりながら、円安恩恵の享受と過度な集中リスクの回避を両立させることが、長期投資の基本的な考え方です。

株ニューでの活用

為替レートは企業の業績に大きな影響を与えるため、商社・資源会社は決算発表時に為替感応度(1円の円安/円高で営業利益がどう変わるか)を開示することが多くなっています。また、前提為替レートと実勢レートに乖離が生じた場合、業績予想の修正開示が行われます。

株ニューでは、登録銘柄の業績修正開示をAIが要約してリアルタイムに通知します。為替の急変動局面で企業がどのような対応をとるかをタイムリーに把握し、投資判断に活用できます。

出典・参考(一次情報)

※ 外部サイトのURLは執筆時点のもので、リンク切れが生じる場合があります。

執筆者

袴田 格

袴田 格Hakamada Itaru

エイジラボ株式会社 代表 / 株ニュー編集長

メガバンクを経て外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして勤務。決算短信・適時開示・海外ニュースを毎日大量に読み込み、機関投資家向けに投資判断を提供してきた経験を持つ。証券アナリスト試験(筆記)合格

「いかに早く、重要な情報だけを抽出できるか」という機関投資家の視点を、AI技術で個人投資家にも届けるべく株ニューを運営。

元メガバンク元外資系運用会社アナリスト証券アナリスト試験 筆記合格

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